日本経済新聞の記事(2008年1月11日朝刊)に賛同してISOの専門家、私田辺コンサルタントは好例の「付加価値審査」を紹介します。
石油製品を扱っている企業の審査です。審査員はコーン(三角錐)ルーフ式石油製品貯蔵タンク(約50立方メートル)のルーフ(屋根)上に梯子階段を使って登りました。
「この部品の名称は何ですか? 機能は何ですか?」
と、審査員は聞きました。「ブリーザー弁を知らないのか?」と訝しげに思った工場幹部エンジニアのひとりが回答しようとしました。これを審査員はもの静かに制止しました。そして言いました。「このタンクの責任者に聞いているのでございます」と。
「設備部門の人に聞いてみる」
と、タンクの責任者(課長)が回答しました。この回答によって審査員は責任者の技術レベルを知りました。審査員は、自分の知っているブリーザー弁のことを「知っている顔」をしないで聞いたものでした。そしてこんな質問による審査がつづきました。一通りに質問が終わって――。
―― 火源があれば、いつでも爆発しますね。
と、審査員は言いました。審査が終了した後で、審査の付加価値として情報提供したものでした。
そのタンクは引火性が極めて強い液体が貯蔵されていることが審査員の質問によって判明したのです。その引火性は、設計時に想定したものよりはもっと強いものでした。
いつの間にか、そのようになっていたのです。そのことに工場の幹部エンジニアは気がついていませんでした。そして幹部エンジニアは提供された情報に喜びました。
審査員は何ら指導することなく、質問をするだけで受審側の危険な状態を幹部エンジニアが自ら気づく審査技術をもっていたのです。さらに審査員は、火源の可能性をいくつか例示しました。この情報もとても嬉しい付加価値でした。
―― これを受けて幹部エンジニアが的確な爆発防止対策を講じたことは言うまでもありません。







