日本経済新聞の記事(2008年1月11日朝刊)に賛同してISOの専門家、私田辺コンサルタントは「審査機関が受審企業に対して妥当性を欠いた顧客満足を与えている例」を紹介します。
―― 顧客満足を心がけてください。
と、ある審査機関のマネジャーは担当審査員に告げました。「苦情を受けないようにしてください」と。厳しすぎる審査をすると苦情を受けるからです。
―― その審査員はある化学工場の審査を拝命しました。工場では化学物質を処理する反応器にある触媒が充填されていました。この触媒は定期的に取り出して工場外で産業廃棄物として処分されていました。
「触媒に有毒な物質が含有されている」
と、触媒に詳しい審査員思いました。そこで触媒組成を確認するために法律で定まっている所定の物質安全データシートの提出をもとめました。ところが入手していないことが判明しました。
反応器を設計した建設業者が、引渡し後もその反応器の管理に関して必要な部分を請け負っているので、当該データは工場がもっていなくても問題はないとの工場側の見解でした。しかし実際問題としては、工場側が「排出者責任」を問われます。問われる先は業者ではなくてその工場です。
「工場にとってリスクが大きい」
と、そう判断した審査員は、工場の為を思って「是正処置要求書」を発行しました。法律で定める物質安全データシートを持っていなかったことに対して是正を要求したものです。このことは事実であるので否定のしようがありません。受審企業はしぶしぶこれを受け取りました。
―― 後日談
「あの審査員は、専門性が高すぎる。よって今後は来ないでほしい」
と、忌避されました。審査機関はこの忌避を受け入れました。これが審査機関の顧客満足でした。
こんなことでは、日本製紙による「再生紙偽装」のような企業不祥事を「ISOによって防止」することは期待できません。







